リアルな問題を解決するサービス
Web サービスには「バーチャルな問題を解決するサービス」と「リアルな問題を解決するサービス」の2種類があると思っています。
Web 2.0 的なサービスと言われるものの多くは前者であり、どちらかというと Web に詳しいごく一部の人たちがターゲットです。
それはそれで良いとは思うのですが、僕の価値観では、世の中の一般の多くの人が抱えている問題を解決する、後者の方にずっと大きな価値があると思っています。
そんな「リアルな問題」と言っていいアルバイトのシフト管理の煩雑さ、これを解決する「シフター」というサービスを、知り合い二人がやっている会社がリリースしました。
» シフター - アルバイトのシフト管理の悩みを解決! -
まだ開発途中の段階でデモをみせてもらったとき、コンセプトと製品(特にUI)ともにとても良いなあ、と感じたのを覚えています。
「機能を削りに削った」「自分のおかんでも使える」
シフト管理画面は以下のような感じ。シンプルでわかりやすく、シフトを入力したり時間をずらすといった操作は、Google Calendar のようにマウスでスイスイーッとできるのが気持ち良さそうでした。
アルバイトのシフト管理、という解決すべき問題に一点集中、限定されているところ、それと使いやすさをとことん追求している姿勢が良いと感じます。
その姿勢は、
» おかんでも使える? ワイアードのアルバイト勤務管理サービス「シフター」 - ITmedia Biz.ID
の記事の下記引用部分からもうかがい知れます。
「これ1つで何でもできるような、多機能で高機能なサービスではない。むしろ機能を削りに削った」(ワイアードの石原明彦社長)。勤務時間(シフト)を組むことだけに特化したユーザーインタフェースで、「普段はPCを使わない人でも使える、自分のおかんでも使える。そんなサービスを目指した」という。
「機能を削りに削った」と「自分のおかんでも使える」は名言です。
Web サービス作りの教科書 Getting Real
僕が「シフター」をいけてるなあ、と思うのは、個人的に Web サービス作りの教科書だと思っている Getting Real(*) に書かれていることをかなり忠実に実行しているからなんだと思います。
» Getting Real(日本語版はこちら)
* シンプルで使いやすい便利サービスをいくつか提供していて、Ruby on Rails の開発元でもある 37signals がそのノウハウを惜しげもなく披露している PDF 本。いまは HTML 形式ならば無料で読めます。
「機能を削りに削った」なんかはそのまま、Build Less(少なく作る) に書かれていますし、機能を特化している点は、What's the Big Idea?(それは結局何をするものなの?) に忠実と言って良い。
プロモーションサイト
シフターのプロモーションサイトもかなりいけてるのですが、プロモーションサイトはこうあるべきということが書かれている A Powerful Promo Site(いけてるプロモサイト) の素晴らしい見本と言えます。
利用者の声つきの導入事例あり、スクリーンキャプチャあり、メディア掲載情報あり、と充実しているのですが、なかでも秀逸なのが、
» CiFTR(シフター)-経営者のメリット
のページです。
ここで、シフト管理がちゃんとされていないがために、時給1000円のアルバイトの人が1人6時間週2日余計に働いてしまった、というありそうなストーリーを語っています。
そうすると余計な人件費が一ヶ月で
6時間 x 2日 x 4週 x 1,000円 = 48,000円
かかってしまう計算です。
シフターの年間契約は 49,800円(2008/9/12現在) なので、一年間かかる費用だけで、ひと月のロスをチャラにできますよ、という提案をサイト上でおこなっているのです。
まさに Web サイトが営業マンに成り代わっています。しかも24時間365日休まず働く営業マンに。
最後に残念な点をちょこっと
ちょっと残念な点は、試用するためには、簡単ではあるが店舗名などを登録し、連絡を待つ必要があること。それで本当に導入を検討しようというユーザーだけをある程度フィルタリングできる、ということもあるのでしょうが、ちょっと UI だけでも試してみたい、というユーザーが気軽にアプリケーションに触れることができる仕組みもあってもいいのではないだろうか。(実際、このレビューも、製品に関してはデモをみせてもらったときの記憶をたよりに書いていて、今現在のバージョンを試しに触りながら書くことができていない)
Getting Real では、そのあたりのことが Free Samples(無料サンプル) に書かれています。
とはいえ、トータルで非常によくできているサービス。こういった「リアルな問題を解決するための Web サービス」はどんどんでてきて欲しいし、僕もそういうサービスを作りたいと思っています。
「シフター」にはそのいいロールモデルになってほしい。応援しています。