「読み、書き、プログラミング」は誰が学ぶべきか?
しかし、メディアでの取り上げられかたや第三者から見た場合、「読み、書き、プログラミング」を、こどものうちから学んで将来はプログラマーを目指そう!みたいな文脈で誤解されがちで、僕も自分がソフトウェアを開発している職業柄から、油断すると知らずにそうした考えに陥ってしまうことがあります。
「スクラッチ」(OtOMO や CoderDojo でも教えている教育用プログラミング言語)を開発したミッチェル・レズニック氏は、「読み、書き、プログラミング」をそのまま英語にした「Reading, Writing, and Programming」と題しておこなったスピーチで、そうではない、と言っています。
一部のプログラマーの素養がありそうなこどもたちにだけに必須のスキルなわけではなく、よりインタラクティブな方法で自分を表現したり、より創造性を発揮したり、あるいは他の人と協調して何かを成し遂げたいすべての人のためのスキルなんだということがわかります。
» Reading, Writing, and Programming Mitch Resnick \| TEDxBeaconStreet 2012
氏の83歳の母親が、レズニック氏の誕生日を祝うためにスクラッチで動くバースデーカードを作った、というエピソードがとても印象的。彼女がプログラマーやコンピューターサイエンティストを目指しているわけはないのは明らかで、ただ息子に喜んでもらおうと、楽しんで新しいことを学び、そしてインタラクティブに表現するためにプログラミングしている。
誰もがプロのライターを目指すために「読み・書き」を学ぶのでないのと同様に、プログラマーを目指すために「プログラミング」を学ぶわけではないのです。
また、プログラミングをおこなうことで、プログラミング以外の様々なことをこどもが自発的に学んでいく様子を、スクラッチでゲーム作りに挑戦するこどものエピソードで紹介している。あるゲームに得点をつけたいけれどやり方がわからなかったこどもに変数の概念を教えたところ、「Thank you, thank you, thank you!!」ととても感謝されたという話だ。変数を教えることで生徒から感謝されるなんてことは、普通の授業ではありえない。なぜなら、授業で変数を教わるとき、こども達はいったいなんで変数を教わる必要があるのかわからないからです。
これは実際、スクラッチをこどもたちに教えたことがある人なら誰でも体験できます。ゲームづくりの基本といえるキャラクターを画面内で自由に動かすときに、半周は180度、一周させるには360度回転させるという角度の概念や、横方向はx座標を指定し、縦方向はy座標で指定するという座標軸の概念やプラス/マイナスの概念なんかも、小学校低学年のこどもでさえもすすんで学ぼうとする。学校で習った、習っていないというのは関係なくて、彼らはただただ面白いゲームを作ろうとしているだけなのだ。
「あなたもプログラミングを始めてみませんか?」という言葉でレズニック氏はスピーチを締めくくっています。
身近にこどもがいたら一緒に始めてみるのがいいかもしれません。
» OtOMO – オトモ
では毎月スクラッチのワークショップをおこなっています。
またこどもたちに教えながら、自分も学ぶという手もあります。
» CoderDojo Tokyo
は、ボランティアで小中学生にプログラミングを教えることができるメンターを探しています。
そして、独学で学び始めようという学生や大人には
» 3分動画でマスターする初心者向けプログラミング学習サイト - ドットインストール
をいつもすすめています。
2013/01/22 04:10:42